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  ニュース     2025/04/14 20:59

シンガポール:金融政策を2会合連続で緩和、景気下支えで 無料記事

 シンガポール金融管理局(MAS)は12日、四半期ごとの金融政策見直しに関する声明を発表し、前回(2025年1月)に続き金融政策をわずかに緩和する方針を示した。世界経済の不透明感や物価の伸び悩みを踏まえた措置。米中による関税措置の応酬で主要貿易相手国の経済が減速し、また物価指標が想定を下回る見通しの中、景気の下支えを優先する。

 MASは主要貿易相手国の通貨に対する為替レートの誘導目標を変えることで金融政策を調整。通貨バスケットに対するシンガポールドルの名目実効為替レート(NEER)の誘導目標について、傾斜と中央値、許容変動幅を変えて景気や物価の安定を図っており、今回は前回に続きこの傾斜を引き下げ、その他の項目は据え置いた。これによりシンガポールドルの上昇圧力を抑え、景気を下支えする。

 MASは今年1月、インフレ圧力の軽減やトランプ第2次政権発足に伴う世界経済の不確実性を考慮し、景気を下支えする方向にかじを切った。金融政策の変更は2年3カ月ぶりで、緩和方向への変更は新型コロナウイルス禍初期の2020年3月以来で5年ぶり。MASは今回、1月に比べて世界経済の先行きが悪化したとして、追加の緩和に踏み切った。

 貿易産業省によると、25年第1四半期の国内総生産(GDP)成長率は3.8%(速報値)で、前四半期の5.0%から鈍化。季節調整済み前四半期比はマイナス0.8%と8四半期ぶりのマイナスだった。米国の関税政策変更に対する先行き不安で世界的に景気が低迷したことが響いた。4月に入ると米中の関税措置の応酬が強まっており、MASは今回、25年通期のGDP成長率予想を従来の1.0~3.0%から0.0~2.0%に下方修正した。

 25年のインフレ予想も従来の1.5~2.5%から0.5~1.5%に引き下げた。需要減退と輸入コスト低下、補助金拡充が背景にあり、追加の金融緩和の余地があると判断した。

 ビジネスタイムズによると、今回の金融緩和はアナリストらの予想通り。ブルームバーグの調査では14人のエコノミスト全員が傾斜の引き下げを予想していた。一部の専門家からは、今回の措置により足元で強含んでいたシンガポールドルの上昇圧力が抑えられ、関税による輸出価格の上昇リスクをある程度和らげる効果があるとの指摘も出ている。


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